寄生虫

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フォーラーネグレリア | 脳を食い荒らし脳死の原因となる殺人アメーバ

フォーラーネグレリア(学名: Naegleria fowleri)は25–35℃ほどの温水環境を好むアメーバであり、鞭毛を持つ特有の形態をしている。遭遇することは極めて希少な種ではあるが、極めて劇的かつ致死性が高い原発性アメーバ性髄膜脳炎(Primary Amoebic Meningoencephalitis, PAM)を引き起こす。感染による致死率は97%に上り、殺人アメーバや脳食いアメーバとも呼ばれる。汚染された水が誤って鼻に入ることで感染し、鼻に入ったアメーバが鼻孔粘膜を通って神経繊維を辿って脳に達する。中枢神経系が貪食されることで、5~10日程度の極めて短期間に急な発熱から昏睡を経て死に至る。予後は深刻であり、生存者はごく少数であるため、治療法の確立が喫緊の課題である。
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リーシュマニア原虫 | 容姿崩壊や免疫不全を生じる悪名高きリーシュマニア症

リーシュマニア原虫 (Leishmania) はサシチョウバエと呼ばれるハエに刺されることで感染する寄生虫であり、リーシュマニア症と呼ばれる寄生虫病の原因となる原虫の一群である。主に熱帯や亜熱帯の地域に多く分布しており、アフリカおよびユーラシア大陸ではLeishmania亜属、中南米および南米ではViannia亜属が蔓延するなど、地域により主な蔓延種は異なっている。リーシュマニア原虫の持つ最大の特徴は、本来は異物を排除するはずの免疫細胞であるマクロファージに感染してしまうことである。リーシュマニア原虫により引き起こされるリーシュマニア症は、皮膚に糜爛(びらん)を生じる「皮膚リーシュマニア症」、粘膜に潰瘍を形成して組織崩壊を生じる「皮膚粘膜リーシュマニア症」、免疫系臓器を侵して免疫不全を生じる「内臓リーシュマニア症」に大別される。外見的には粘膜リーシュマニア症が衝撃的な症状を呈するが、内臓リーシュマニア症は治療しなければ死に至る深刻な感染症である。世界で毎年100万人以上の新規感染者が発生し、内臓リーシュマニア症においては年間5~9万人が死亡していると推定されている「顧みられない熱帯病」の一角である。
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有鉤条虫 | 脳に無数に巣食う神経嚢虫症の媒介寄生虫

有鉤条虫(ゆうこうじょうちゅう) Taenia solium は加熱が不十分な生の豚肉、虫卵を含んだ水や、汚染された野菜を食べることによって感染するいわゆるサナダムシの一種であり、脳に巣食うことで無数の嚢胞を形成する神経嚢虫症の発症原因となる寄生虫である。中枢神経系の寄生虫疾患では最も多い寄生虫症である。この寄生虫は、豚肉の生食により卵が体内へ侵入した後、成虫になり、腸内へ寄生して便中に虫卵を産卵する。この際、排泄後の手洗い不足等により便虫の虫卵を誤ってヒトが摂取してしまうことにより、体内で孵化した幼虫が脳に移動し、脳に無数に巣食い、棲み家としてしまう病態が神経嚢虫症である。このため、MRIの画像診断では脳に巣食った多数の幼虫が詰まった嚢胞(嚢虫)が認められる特徴的な像を呈し、症状としては中枢神経の損傷により、多く認められる症例の順にてんかん、水頭症、頭痛、認知症などがある。
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フィラリア | 象皮病や陰嚢水腫に見られる局部肥大化の原因寄生虫

フィラリア (Filaria) とは犬や稀に猫などの動物に寄生するバンクロフト糸状虫 Wuchereria bancrofti などであり、犬糸状虫とも呼ばれ、人に感染することで皮膚やリンパ管を通した水分の移動が妨げられ、余分な水分の滞留による巨大なむくみを形成する。極端な例では陰嚢が30kg超まで肥大化し、ドラム缶ほどまで巨大化してしまうケースも報告されている。
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トリパノソーマ | 睡眠病とシャーガス病により突然死をもたらすサイレントキラー

トリパノソーマ (Trypanosoma) は、アフリカ睡眠病やシャーガス病と呼ばれる重篤な感染症を引き起こす原虫。これらの病気は、トリパノソーマが血液やリンパ液に侵入し、神経系や心臓などの臓器に損傷を与えることで引き起こされる。アフリカ睡眠病はツェツェバエによって媒介され、主にアフリカのサバンナ地帯で流行している。シャーガス病はサシガメによって媒介され、主に中南米で流行している。これらの病気は早期に発見されれば治療可能であるが、症状が乏しく無治療のまま進行しやすく致死性が高いため、熱帯を中心に多くの人々の命と健康を脅かしている。
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